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暗闇で恋しましょう

第38章 幸せに

俺は自分を戒めるように、受け取った鍵をぎゅっと強く握り締めた。



「…………なぁ、祥人。俺」



ピーンポーン



無機質なチャイムの音に、飛翠の言葉が遮られた。


それが誰からのチャイムなのか、なんて聞かずとも一目瞭然で。


飛翠はゆっくりと足を玄関に向かわせた。


俺もそのあとに続くように、足を運ばせる。


ガチャ、と戸が開く音がして見えた、数人の男。



「甘夏、飛翠さんですね」

「はい」

「橋立杏さんを誘拐した容疑で逮捕します」



飛翠が差し出す手に、かちゃんと付けられる手錠。


辛いとか悲しいとかそんな感情も湧いてこないほど、それはあまりに呆気なくて。


それでも、飛翠の背はしっかりと伸びていた。



お前は、強いな

飛翠

その背からは“絶望”を一切感じさせない

寧ろ、お前が見えてる未来は、きっとーー


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