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暗闇で恋しましょう

第6章 罪を背負うのは

それでも心底妹のように可愛がっていた杏に、祥人が触れたことが妙に引っかかった。


その真相を詰め寄れば、何ら難しいことは無い。


全ての原因は俺にあった。



『言うんだよ。杏ちゃん。切なそうに。だって、仕方ないでしょ、って』



『気持ちと共に大きくなる欲情。だけど彼は、それを満たしてはくれないでしょう、って』



祥人はその気持ちの何たるやと彼の名を、はっきり告げなかったが、俺は瞬時に理解した


その気持ちというのは、俺を好き、というもので。


彼はイコール俺だ。


杏の中で徐々に俺に対する気持ちが変化していってるのは、薄々感じていた。


だけど、自覚した上で、そんなことまで考えていたなんて夢にも思っていなくて。


約束を破って、外部に目を向ける程、杏の抱えているもんは重かったんだろう。


優しい祥人はその様を見て、救いたいと願ってしまった。


外部よりはまだ、俺に近い自分の方がマシなんじゃないかと。


そして、今も尚続いているそれは、祥人の優しさの延長線なのだ。



「というか、もうお前が触れていいと思うけど。その方が杏ちゃん喜ぶし」



心の内だが、少し尊敬したのに、それを全く塗り潰すようなことを言う祥人。


だが、その言葉はひどく納得が行く。

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