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暗闇で恋しましょう

第10章 お買い物3

昔、よく出たこれは、こうやっておさまったはずなのに……



“翡翠……”



今回は何故かしつこく俺を呼ぶ。


落ち着き始めていた呼吸はまたも乱れ、息がし辛くなる。



“翡翠……翡翠……大丈夫よ…目を開けて…”

“私を………”




“見て……”




その言葉に脳は拒否反応を起こすのに、体は従順で。


ゆっくりと瞼が上がっていく。



あぁ……どうして、なんで…

俺は、確かにお前を忘れられた、筈なのに…



いない筈のその人は、はっきりと俺の前に居て。


その顔を優しく綻ばせ、俺の頬に手を添えている。


何故、今更、出てくる。


お前から逃げようとした俺が、許せないのか?


お前を……




救えなかった俺を、許せないのか……




そうか。そうだよな。


あの時俺は……いいや、今でさえ俺は無力だ。


何も出来ない。何も出来なかった。


恨まれて、当然だ。


だけど、だけど……っ…


もう苦しいんだ。


息が詰まるんだ。


生き辛いんだ。


もう、お願いだから





「許して……」






何度してきたか分からない懺悔。


それをかき消すかのように、俺の脳に響いたのは









“ひぃちゃん!!”









そんないつもの呼ぶ声。

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