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baby,just say

第1章 第一話-うまくいかない-

ここは、人間達の様々な願いが集まる場所。

歌手になりたい。

あの人と付き合いたい。

幸せな家庭でいられますように。

志望校に合格しますように。

仕事で昇進しますように。

人の数だけ願いはある。
それを叶えるのは‥、

「すばる君はまた歌手志望にするん?」
大切そうに抱えている彼の書類を覗き見しながら、大倉はそう言った。
「また、とはなんや!また、とは!俺はな、音楽が好きやねん!」
「知ってるけどさぁ〜、ほら、この人はな、洋食屋を繁盛させたいんやって。夫婦二人で、お金貯めて、店をオープンさせたのに‥人が来ないんやって!こういう願いこそ!叶えるべきやないの?!」
「アホ!こいつはなぁ、こいつの歌はなぁ‥!」
すばる君の語りがまた始まった。
早々に飽きた大倉は誰よりも分厚い書類を持ち、真剣な眼差しで読んでいた安田に話しかけた。
「どうしたん、ヤス。」
「人の話は最後まで聞け!」
「俺ら妖精やん。」
黙り込んでいるヤスの書類を背後からチラチラと彼は見ながら、
「しょうが‥い、ふた、りでなか‥よく暮らせますように?なんや、恋愛なんて珍しい。」
「わ!!‥ちゃうねん。」
振り返ったヤスはしょんぼりと頭をうなだれた。
「何が?」
「この二人なぁ‥。」
「すばる君、すばる君!俺も、歌手になりたい子に決めた!」
「‥セーラー服美少女ファイブ‥パンチラもあり!!‥りょう、これはあかんやつや‥。」
「え?なんで!歌歌ってたで!」
「もー二人とも煩いなぁ。で、ヤス、どうしたの?」
そう大倉は聞くと、ヤスはニッと笑って、
「ううん、何でもない。じゃあ‥そろそろ行くわ!」
そう言って彼の目の前から一瞬にして安田は消えた。
「も〜なんや〜早いわぁ〜。」
溜息をつく彼の後ろでは、
「せやから、パンチラが中心であって音楽やない!」
「すばる君だって、セーラー服着た人達のやってたやん!」
「あれはパフォーマンスや!」
「これだってパンチラタイムってパフォーマンスちゃうの?」
「パンチラタイムってなんや!パンチラにタイムがあるか!」

騒々しく時間は刻々と過ぎていた。

与えられた時間は一週間。
それを過ぎたら願いは一旦無効となる。
それまでに夢を叶えてあげるのは彼等クローバーの妖精達の仕事だ。

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