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baby,just say

第3章 第三話-君の声-

「いいぞ、これでな、ばぁーん!大ヒットや!マル、お前はいける!」
「マネージャーさん、少し、静かに。」
「あ、すんません。」

ラジオブースの中で心配そうに苦笑いをするマルを見ながら、手を振った。

「あいつな、ああ見えて意外に臆病なんや。」

「ありがとうございました〜。」
スタッフは形式ばった礼とパラパラと拍手をして、扉を開けた。
何度もお辞儀をしながらマルは出てくると、何か言いたそうにスタッフに声をかけようとしていた。

「いくで。」

俺は服を引っ張りながら、
「ありがとうございました!今後も宜しくお願いしますー。」
と挨拶だけして、外へ連れ出した。

廊下まで出ると、

「どう?どうやった?」
とマルは青ざめた顔で俺の片腕にしがみついてきた。
洋服越しにも小刻みに震えているのは分かる。
「お前は‥最高や!やっぱり俺が見つけただけはあるな!」
そう言ってやると、みるみるうちにふにゃっとした笑顔に変わり、腕からも力が抜けるのが分かった。
「まさか一日でラジオに出られるなんて!夢にも思わんかったぁ‥。」
「言ったやろ、俺に任せれば‥。」

人の心も変えられる。

それは言わなかった。

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