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ふぁざー × こんぷれっくす

第5章 ファスシネイション

ママに言われた通り、渋々清水にスリッパを用意する。


「どう、ぞ」


気持ちに抵抗があるせいか、声が詰まってしまう。


「どうも。お邪魔します」


清水は差し出されたスリッパをさも当たり前のように履いて、私の頭上に向かって一言いい捨てていった。


く、悔しぃぃぃ~!

ここは私の大事な我家なのに、我が物顔で上がり込みやがって!

帰ったら家じゅう殺菌消毒してやるんだから!


リビングに向かう清水を目を細めて凝視しながら、強く心に誓った。


「どうぞ、座って。清水君は紅茶と珈琲、どっちがいいかな? 他にも色々出せるから好みの飲み物があったら遠慮なく言ってね!」

「ありがとうございます。では、珈琲を頂いてもいいでしょうか?」


くぅぅぅ。またしても良い子ちゃんぶって!

いつものくそ生意気な態度をバラしてやりたい!


「ふふ、珈琲ね。じゃぁこないだ買ってきた豆にしようかな~」

「色んな種類をご用意出来るなんて、凄いですね」

「それほどでもないわよ。主人も私も食べ物とか凝り性なのよ。そう言っても、素人レベルだけど」

「風香さんのお父様……もなんですか」


清水はママの返事に妙に含みのある言い方で返して、私の方を見ると口元に笑みを浮かべる。


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