エスキス アムール
第9章 変態熊吾郎
「え?そうでしょ?
名刺にも書いてあるし…。」
「そういうことじゃねーよ。」
確かに俺の名前は、波留だよ。
俺が驚いたのはそこじゃない。
貴方が、急に、波留くんと、
呼び始めたことに、だ。
俺が目を見開いて、
彼を見ると、
「ツッコミもできるんだ~」
と、はしゃいだ。
「照れちゃって、かわいーな。」
なんだこのキャラ
なんだ、コイツ。
これが爽やか好青年の本性なのか。
「だとしても、
本性出るの早すぎだろ…。」
「波留くんには、
僕のこと全部見て欲しいからサ。」
サ。ってやめろ、
サ。って。
熊吾郎といい、
こいつといい、
上にのし上がるには
変態性を出していかなきゃ
いけないってことか?
だったら、俺、社長になれなくてもいーよ…。
「またさ、今度、食事しよう。
二人で、さ。」
木更津(もう呼び捨て)の手が俺の太ももを摩って来た。
嗚呼。
わかった。
確定だ。
何処かで経験したことのある、
この感じ。
コイツは、きっといや、絶対、
…………ホモだ。