エスキス アムール
第10章 ニガイキオク
事件は突然、起こった。
「おはよ。みきちゃん。」
食堂で見かけたから、
何時ものように話しかける。
いつもなら、
ニコニコして
挨拶をしてくれるのだけど、
その日
みきちゃんは俺を見るなり、
泣きそうな顔をして
食堂を飛び出して行ったのだ。
何事か。
何か傷つけることをした
覚えもない。
要に聞いて見たけど、
わかるはずもなく。
しばらくして、
またみきちゃんが一人でいる所を見かけたので、話しかけた。
みきちゃんの瞳は、
俺を見ず、
俯いてしまったきり。
『俺、何かしたかな。』
傷つけるようなことを
したのならゴメン。と、
避けている理由を訊いた。
すると、
みきちゃんからは
驚くべき言葉が出てきたではないか。
『波留くん、
良子と付き合ってるんでしょ…?』
『…はぁ?!』
思わず、大きな声を上げた。
まるで身に憶えが無かったからだ。