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エスキス アムール

第11章 デート

【はるかside】





大野波留
090********
ohno0116.maru@******


「ふふ…っ」


私は、
"プライベート用"のスマホの
電話帳に入った
その名前を見つめた。


自分から
連絡先なんて聞けないし
まさか、大野さんが
美術展に誘ってくれるとも
思っていなかったから、


もう諦めていた。



『連絡先を交換しよう』


そう言われたとき、
本当に嬉しくて、

顔が赤くなっていないか
とても心配だった。



急いでバックから、
2台ある携帯のうち、
迷いなく一つを取り出す。


それは、大野さんが
あの時届けてくれた、
スマホだった。



大野さんは
私にとってお客さんではない。

好きな人だ。
だから、どうしても
プライベート用に入れたかった。


だけど、
プライベート用に
自分の連絡先を入れていたら、
大野さんはどう思うだろうか。


だから、
昔、大野さんに
そのスマホはプライベート用かと訊かれたとき、
もし、交換した時のことを考えて仕事用だと嘘をついた。


彼はそれを覚えていたのか
わからないけれど、

私がスマホを取り出すと、
じっとそれを見つめていた。


わたしは、自分が傷つくことばかりを恐れて、
何も見えていなかった。



そんな、私の嘘が、

彼を傷つけていたなんて。








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