エスキス アムール
第2章 オオノさん
「…」
気を遣って
嘘をついているんじゃないだろうか。
そう思って、
申し訳なさそうに
大野さんを見つめる。
「ほ、本当だってば!
それよりさ、
こっちで話しよう?」
大野さんの
嘘は分かりやすい。
答え方で、
あ、今嘘ついたんだなって
分かる。
目が泳いで、
言葉がうまく出なくなる。
今はその時だ。
クスクスと笑う私から
目を逸らして、
大野さんは私の手を引っ張ると、ベッドへと向かった。
一緒に倒れこむようにして
寝転がる。
「はぁー疲れたー」
仰向けになって
目を瞑る大野さんは、
確かに疲れている
表情だった。
だけど、
綺麗な横顔が
崩れることはない。
それを見つめながら、
「今日も忙しかったの?」
大野さんに問いかけた。
「うん、ちょっとね、
今日は会議やらなんやらに
追われてねー」
「副社長さんは大変だ」
「そう、本当そうだよ。
社長より大変!
できる副社長は辛いぜ。」
そんなことを
冗談目かして言う。