エスキス アムール
第15章 カノジョノセカイ
「もう、やめろ。こんなこと」
こいつには、向かない。
そう思ってそう言ったけど、
彼女は首を縦には振らなかった。
夢のために、お金が必要で。
一人で生きていくには
お金が必要で。
自分で稼がなきゃならないんだと。
「もう大丈夫。慣れたから。」
最後には、そう呟いた。
それからの彼女は
別人のようだった。
お客の前では笑顔を崩さず、
酷くされても、何も言わない。
どんどん、
スキルを身につけていき
これは誰だと思うくらい、
妖艶に微笑むようになった。
しばらくして、
彼女が絵を描くことを知り、
俺を描いてよと頼んだが
好きな人じゃなきゃ
描けないと、断られた。
随分すっぱりと、
好きじゃない
と言われた時は、
なんだか、
寂しくなったのを覚えている。