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エスキス アムール

第15章 カノジョノセカイ






彼女が仕事場に持ち込んでいた
スケッチブックには、

彼女が好きな異世界が描きこまれていた。



それを見ると、
現実から逃避できるようで、
彼女がいないときに

こっそり見るのが好きだった。


いつものように、
こっそり
スケッチブックをみると、


ある人物が一人、描かれているのを見つけた。



写真のように
緻密に書かれたその人は

彼女に携帯を届けにきた人だった。



彼が優しいのは、俺も知っている。

最初彼がきたとき、
彼は携帯を届ける役目だけに
徹しようとしていた。


それを感じたから
他の客を断って彼を入れたわけだけど、


彼が一年も続けてココに来るとは
思っても見なかった。


彼と彼女の間に何があったのか。
彼女はそれだけは話してくれなかったけど


もし、彼が彼女のことを
好きになってくれれば、

彼女はきっと幸せになるのに。


そう思った。



だけど、
それはなかなかうまくいかない。

その彼とのデートだと言って
嬉しそうに出かけた彼女は、

涙で顔をぐちゃぐちゃにして帰ってきた。



彼の知り合いだという女に
傷つけられ、

体調を崩した彼女。



もう一度、彼が
早く店に来てくれることを
願った。


彼が店に来た時のために
住所を記した紙を、

他のウェイターに渡した。


あの女のことなんて、
どうでもいい。

気にしなくていい。


会わないと決めた彼女に、
無理矢理会わせる形を作った。


彼女は呆然としている。

何とか彼が話をつけて、
これで良い方向に進めばいい。


そう思った。










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