エスキス アムール
第16章 バーボンと、ストーカー
「ここは
一度、接待で利用した店ですね。」
「そうだ。
最近になって、
あのNO1のアカリという子に
相手をしてもらったんだよ」
ドキリ。
久しぶりに
はるかちゃんの名前をきいて
しかも
それが社長の口から
出てくるもんだから
ひどく動揺した。
………待てよ。
社長の相手だって?
無性にイライラする。
身体を重ねるときは
考えないようにしていたが、
他にもお客がいるのは
当たり前なのだ。
はるかちゃんが
俺に向かってしていたことは
他の客にしていたことと同じ。
ふつふつと、
奥底のほうから
何かが湧いて出てくる。
でも今となっては、
こんな感情も無意味なものだ。
「ずっと、
私がお店に行っても
風邪でいないと言われたりしてね。
ようやく捕まえたんだ」
一年越しだよと、笑っている。
おそらく、
風邪でいないというのは仮病だろう。
仮病だとしたら、
どうして今になって
この人の相手をしたのだろうか。
ぐるぐると
彼女のことを考える俺をよそに、
社長は話を続けた。
「しかしキスの一つも
させてくれないで
NO1と言えるのかね。」