エスキス アムール
第16章 バーボンと、ストーカー
俺は、
すっかり温まって、
幸せそうに雑誌を読む彼に
軽く苛立ちを覚えながら、
素直に風呂に入った。
「おー、出てきたね。」
「……」
「最近どう?」
「……」
何だこいつは。
そんなに親しかったか?
最近どうって言われるほど。
最近?
ああ、最悪だよ。
気分はガタ落ちの上に、
残業続きだ。
この世の中はな、
こういう犠牲者の上に
成り立ってんだ。
お前みたいに、
髪を赤く染めて
ヘラヘラしてらんねーんだよ!
↑完全な八つ当たり。
と、言いたいところを
グッと抑えて、水を飲んだ。
酔いを覚ませ。
酔いを。
「まあ、
そんなに怒った顔しないでよ。
俺ね、
オーノさんの事好きだよ。」
「は?」
「だから、良いものを届けにきた。」
そう言って、
カバンの中から取り出したのは、ひとつのスケッチブックだった。
「なんだよ、これ…」
そういって、パラパラとめくる。
そこには何ていうの?
この世界じゃない、
何とも綺麗な色使いで、
細かく、異世界が描きこまれていた。