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エスキス アムール

第18章 良ちゃんの恋





「え…?」

後ろを振り向くと、
同い年くらいの男の子。


「傘忘れちゃって……」


私がそう言うと、


「これあげる。」


そう言って差し出されたもの。

少し年季の入った、
折り畳み傘だった。



「い、いいよ。
私、すぐ近くだから…」


「いーのいーの。
俺、友達とここで
待ち合わせしてるから。

そいつにいれてもらうし。」


風邪引いちゃうよ?

そう言って、
ふにゃっと笑った。



「でも…」


「いいから。

こんなボロ傘で
申し訳ないけどね。」

その言葉に首を振る。

それはどうやら、
小学生の時から使っている物らしい。



「あの、これどうやって返せば…」

戸惑う私に、


「ん?いーよ。
多分ね、コイツ、
もう寿命なんだよ。

この雨で壊れると思うんだ。

………リョウコちゃん?に、
使ってもらえたら本望だと思うな。」



「……っ!」

リョウコちゃん。

彼は確かにそう言った。



初めて、


初対面でちゃんと
読んでくれた人だった。












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