エスキス アムール
第23章 別離と別離と別離
「そんなの嘘に決まって…!」
「うるせぇよ!!
現に、社長の名前じゃなくて
お前の名前が書いてあるだろうが!
この期に及んでそんなこと
よくも…!」
彼は頭を抱えて
座り込んでしまった。
何でこんなことになったんだ。
「要…!」
要の近くにいって、
座り込んだ要の背中に手を当てる。
要は身体をビクリと動かして
俺を睨みつけると、
静かな声で言った。
「お前のせいで
結婚だってできなくなった。
お前がこんなことするから!!!」
「お前は…っお前は、
俺のことは信じないのかよ!!
そんな紙切れ一枚を信じるのかよ!!!」
今度は、俺の声が
わんわん
と、そこに響いた。
要の瞳はその声で少し怯む。
俺は要を睨みつけると、
彼の横をすり抜けた。
その俺の腕を
要は折れてしまうのではないか
と言うくらい、握り、
「お前って結局金だったんだな。
お前は能力があったんじゃない。
その不正でのし上がったんだ!」
俺の耳元で、
小さく、だけど、力強く、
俺に刺さるように囁いた。
要の冷たい言葉が
グサリ、グサリ
胸を突く。
不正ってなんだ。
さっきからなんなんだ。
俺は一生懸命、
自分の能力でのし上がってきたっていうのに。
要だって、すごいって言ってくれてたのに。
あいつは、どうせ不正だと。
そう思っていたというのか。
全身の力が抜けてしまいそうだった。