エスキス アムール
第23章 別離と別離と別離
「……」
そいつは、
椅子でくるくる回ることを
やめずに、
なにもいわない。
「どういうことですか。
高橋要を解雇する
理由を教えてください」
走って呼吸が乱れている
俺の息切れする音しか
聞こえなかった。
そいつはしばらく
何も聞こえていないような顔をしていた。
そして、無言でテレビをつける。
そこからは、
アナウンサーが
忙しく中継している様子が
映し出されていた。
最初は俺を無視する手段だけのために
テレビをつけたのだと思った。
しかし、そばにいる秘書も様子がおかしい。
もう一度テレビをみると、
中継に写っていたのは、うちの会社だった。
急いで外をみると、
たくさんのマスコミが、
到着するところだ。
必死にその中継に耳を傾ける。
するとらそこからは、
『観月製薬の副社長が、
情報漏洩の不正に手を染めた模様です。』
そんな言葉が聞こえてくるではないか。
「なんのことだ…」
その声に、社長は笑った。
まるで、俺をバカにするかのように。
「いいかい?キミは不正をしたんだ。
情報漏洩でお金を貰った。
警察に連絡をしたから
もうじき警察がくる。
君には辞めてもらうよ」
そういって目の前に置かれる
一枚の紙切れ。
そこには、
要がもらったもの同様、
解雇の文字が書かれていた。
嵌められた。
そういうことか。
要といい、俺といい、
こいつに嵌められたんだ。
自分が不正をしたのが
ばれそうになったから、
俺に罪をなすりつけたのだろう。
秘書は、俺と目を合わせないように
うつむいている。
こいつも知ってたのか。
なんで俺は気が付かなかったんだ。
こいつに利用されたことよりも
気が付かなかった自分に
とても腹が立った。