エスキス アムール
第24章 逃亡日記
彼はニコリと笑ってはいるけど、
目が笑っていない。
相当怒っているご様子だ。
………なぜ。
「あの、なにか…?」
「なにか?じゃないよ!!
どれだけ僕が心配してたと
思ってるんだよ!!」
「…携帯切っててさ。
今、見たんだよね…?」
「とりあえず、開けろ。
この野郎。」
完全に怒っている。
怖い。いろんな意味で。
余りにも力が強いので
渋々開ける。
そうすると、
彼は走ってきたのか
息を切らして
こちらを睨みつけた。
しばらく見つめあったかと思うと
急に、彼の顔が崩れて
急に視界が暗くなった。
「う、わ、なんだよ!離せよ!」
なんだよ!!!!
急に!!!
あっという間に
彼に抱き締められて
全く身動きがとれない。
「は、はなせよ!!」
「嫌だ。」
「離せってば!!」
「嫌だ!」
「…まじで、ハナシテ…」
男同士がなんでだよ
というのもあるが、
何より、彼の力が強すぎて
呼吸ができないのだ。
気管がツブレル。
もう一度、
離せと言おうとすると、
耳元ですすり泣く声が聞こえた。