エスキス アムール
第26章 彼の邸宅
「波留くん」
「…わ、」
木更津は笑いながら
俺の腕を引っ張って抱きしめると、
背中に手を這わせ、
すーっと一本の筋を描いた。
「…っぁ…」
「波留くんって、
本当に感じやすいよね。
しかも、素質あるよ。
あんなに感じちゃって。」
「う、うるさいっ」
「そんな顔して反応するから
襲われるんだよ?」
「は、はなせ!
離せよ!!」
「いいからいいから。
照れない照れない」
てれてねーよ!!!
「ねぇ。」
「なんだよ。」
「僕の家においでよ。」
「無理」
木更津の家なんかに行ったら、
なにが起こるかわからない。
無理だ無理無理だ無理。
「でも、いつまでもホテルにいる気?
お金いくらあっても足りないじゃん。
何もしないから。
その方がいいよ。」
裸で言われても説得力ないけど。
まあ、それもそうだ。
いつまでもホテルになんかいれないし、
かといって、
実家もないんだから行く場所もない。
ここは、
木更津の言う通りにした方が得策だ。
「本当に、何もしない?」
「しないよ。
さっきのだって合意だったでしょ?
無理矢理はしないポリシー」
「まあ、木更津は
ホモでも犯罪部門じゃないもんな」
「やめろ。
ホモを組織化するのは」
「じゃあ、
ほとぼりが冷めるまで…。」
「聞いてる…?」