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エスキス アムール

第34章 彼の選択




「一口食べてもいい?」

「うん、はい」


そう言って、僕の方にずらされるお皿。


「あーん、とかは…」

「ない。」


ですよね。
これでやったら、
頭がおかしくなったと思ったほうがいい。
今度家でやらせよう。



「ね?うまいでしょ?」

「……」


まずい。
まずすぎる。

調和というものが
ひとつも感じ取れない。

彼は正直言って、
舌の神経が切れてるんじゃないかと
思うときがある。



「波留くんさ、
そんな味覚でよく
料理をおいしく作れるね」

「え?これまずいの?」


まずいだろ!!!
どういう味覚してるんだよ。

だいたい、おかしいんだよ。
30分前、彼はメニューを見ながら、
「あ!これうまそう!」

と、目を輝かせた。
さぞかし美味しいのだろうなと思ったけど。


これって、
「おいしそう」って頼むものじゃなくて

「なにこれ、おもしろそー」って
頼むものじゃん。
肝試し的なね、感じでね?



聞いたことある?
パフェの生クリームの上に
たくあんのってるヤツ。



聞いたことねーよ。
どういう味すんだよ。
そんなに奇跡的な組み合わせなのかよ!


と思って食べたら、


まずかった。

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