エスキス アムール
第34章 彼の選択
【波留side】
「どうしたの?話って」
たまたまあった秘書。
この人も突然の解雇で大変だったのだろう。
前より少しだけ
頬がこけている気がした。
社長の不正を知り、
何度も俺に伝えようとしたが、
社長に脅されてそれができなかったらしい。
本当に申し訳ないとまた頭を下げる。
「もういいからさ。
要件はそれだけ?」
「違うんです。
どうしても伝えなきゃと思っていたことがあって」
「なに…?」
「大野さん、
恋人と別れたんですよね…?」
どんな顔をして会えばいいのかわからずこんなに後になってしまったと、彼は情けない顔をした。
恋人。
その単語で一瞬木更津が浮かんだが、
きっと彼が言っているのははるかちゃんの方だ。
不正を知っていた人物だ。
社長が関わっているのなら
はるかちゃんと俺が付き合ってたことくらい、知っているのだろう。
久しぶりに彼女の話を誰かとすることに何か懐かしさを覚える。
それと同時に、彼女はきちんと暮らせているのだろうかと気になった。
「…別れたけど…」
「それ、社長のせいなんです」
「……」
秘書は必死に訴えた。
彼の言うことにたいして驚きはしない。
そんなことだろうと思っていた。
彼女に吹き込むのは、社長しかいないから。
社長のせいでこうなったとしても、
別れようと決めたのは彼女だ。
スケッチブックの絵をぐちゃぐちゃにするほど、決意を固めたのは彼女の他に誰もいない。
彼女は進んで、
俺から離れていったのだ。
それを聞いたところで、
どうにかしようとは思わなかった。
「どうしたの?話って」
たまたまあった秘書。
この人も突然の解雇で大変だったのだろう。
前より少しだけ
頬がこけている気がした。
社長の不正を知り、
何度も俺に伝えようとしたが、
社長に脅されてそれができなかったらしい。
本当に申し訳ないとまた頭を下げる。
「もういいからさ。
要件はそれだけ?」
「違うんです。
どうしても伝えなきゃと思っていたことがあって」
「なに…?」
「大野さん、
恋人と別れたんですよね…?」
どんな顔をして会えばいいのかわからずこんなに後になってしまったと、彼は情けない顔をした。
恋人。
その単語で一瞬木更津が浮かんだが、
きっと彼が言っているのははるかちゃんの方だ。
不正を知っていた人物だ。
社長が関わっているのなら
はるかちゃんと俺が付き合ってたことくらい、知っているのだろう。
久しぶりに彼女の話を誰かとすることに何か懐かしさを覚える。
それと同時に、彼女はきちんと暮らせているのだろうかと気になった。
「…別れたけど…」
「それ、社長のせいなんです」
「……」
秘書は必死に訴えた。
彼の言うことにたいして驚きはしない。
そんなことだろうと思っていた。
彼女に吹き込むのは、社長しかいないから。
社長のせいでこうなったとしても、
別れようと決めたのは彼女だ。
スケッチブックの絵をぐちゃぐちゃにするほど、決意を固めたのは彼女の他に誰もいない。
彼女は進んで、
俺から離れていったのだ。
それを聞いたところで、
どうにかしようとは思わなかった。