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エスキス アムール

第34章 彼の選択





「彼女は社長に
大野さんが不正をしていると
嘘を吹き込まれて、
夢が叶わなくなるとか
経歴全部バラすとかって脅されて…、
それで…!」

「……」


夢が叶わなくなる。
経歴をバラす。


なんで汚い手だろう。
彼女は、高校を中退してから
夢を叶えるために必死になって働いてきた。
その夢がもうすぐ叶えられる。
その時に、こんなことで脅されたら
誰だって彼女と同じことをしているだろう。


彼女にとって、
絵を描くということは生きることと
同じなのだ。




彼女と美術展に行った時のことを思い出す。
絵のことを説明する彼女は、
今まで見た中で一番輝いて見えた。

この子は本当に絵が好きなんだと実感した。
それを取り上げられる辛さといったら、
ないだろう。


そんな形で脅されて、
俺の元を去らなければならなかった
彼女を思うと、心が痛んだ。

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