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エスキス アムール

第34章 彼の選択





「あのさ、なんで社長って
俺をそんなに目の敵にし始めたわけ?」

「もともと、どんな仕事を押し付けても
そつなくこなして周りの評価がどんどん上がる大野さんに彼は嫉妬していました。
上からも社長をそろそろ大野さんにと
打診されていたんです。

だから、日頃からボロが出ないか調査を。」


「あー、てことは一気に
何人もの人に見はられてたってわけだ。」


木更津と、三嶋と社長か。

「…何人も…?」

「いや。こっちの話。」



それにしても、
あの元社長はとことんクズだな。
あいつがちゃんと仕事さえすれば、
俺に社長をだなんて上からくるはずなかったのに。

そんなクズ社長よりも、
俺は彼女のことで頭がいっぱいだった。


そんな脅され方をして、
哀しい思いをさせてしまったのなら
それは、俺のせいだ。

彼女と付き合う時、
彼女は少しばかりの抵抗を見せた。
あれは三嶋に脅されていたことからの抵抗だったが、あのとき、俺が押し切らなかったら、彼女と付き合うことはなくて。

辛い思いもさせなかっただろう。
俺は彼女の最後の姿を見ていない。

どんな気持ちであの手紙を書いたのか、
どんな気持ちであの家を出たのか
計り知れない。



あんな別れ方をした。

それが、心の何処かで
ずっと引っ掛かっていた。


もう一度、会いたい。


彼女ともう一度あって、
きちんと話して騒動のことを謝りたい。


彼女に会おう。
そう決心した。

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