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エスキス アムール

第34章 彼の選択

【木更津side】



僕が想像した通り、
彼の心はあっという間に離れていってしまった。


秘書が彼のもとに来たその日。
沢庵パフェを残して
突然帰ろうと言い出した彼は終始無言で。


どうしたの?


その一言が
どうしても聞けなかった。
何を考えているのか、
痛いほど僕にはわかったからだ。


彼女。

はるかちゃん。
彼女と直接面識はないが、
興信所で波留くんをつけていたとき、
彼女とのデートの写真を見せられたことがあった。

可愛らしい女の子だった。
あの子と楽しそうに歩く波留くんの写真を見たとき、胸がギュッと締め付けられるように傷んだのを今でも覚えている。



あの日、僕は今までにないくらい焦っていた。
無言でいる彼の隣で、
どうやったらこのまま引き止めて置けるのか。

僕への気持ちを留めておくのには
どうしたらいいのか。
それしか考えることができなかった。

そんなことを考えていたら、
家につくのはあっという間で。

すぐに寝る時間がくる。
ここで目を瞑ってしまえば、起きたら朝だ。
もし、朝起きて横に彼がいなくなっていたら。
そう思うと、彼を抱かずにはいられなかった。

何かを言われる前に彼を抱いて、
僕を刻み込まなければ。
僕への気持ちが薄れていくと感じる中で
繋ぎ止めておけるものは、もう身体しかなかった。

愛撫もいつもより乱暴で。
はやくはやく繋がろうと必死だった。


繋がったところで
彼の気持ちはどうにもならないのに。







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