エスキス アムール
第34章 彼の選択
それから何日か経って、
仕事を終えて
彼は荒れに荒れて帰ってきた。
「波留ー、ただいまー」
相当、酔っていてその酔い方は普通ではなかった。
彼がこんなにも酔いつぶれているのを見るのは初めてだ。
何かあったのかと、不安になる。
ベッドで寝転んでいると、
木更津はアルコールの匂いをさせながら俺の上にのしかかってきた。
その瞳はゆらゆらと俺を見つめる。
「おい、大丈夫?
今、水持ってくるから」
「だめ。」
俺がベッドから降りようとすると、
それを引き止められた。
酔ってるだけじゃなく、
彼の様子がおかしいことは一目瞭然だ。
そういえば最近、身体を求められていない。
彼に久しぶりにのしかかられてやっと気がついた。
最近は仕事が終わる時間がそれぞれ違うので、どちらかがすでに寝ていることが多かった。
だから気がつかなかったのかもしれない。
「どうしたんだよ。」
「なにが?」
「木更津、今日おかしいよ。」
「……そんなこと…」
「え?」
「そんなこといいから、
波留くん、シよ?」
そう言ったかと思ったら、
急に俺の身につけているものを全てはぎ取ろうとする。
「え、ちょ、やめろって。
よくないだろ」
「いいから」
いつもの、木更津ではなかった。
乱暴に俺の服を剥ぎ取ろうとする彼の手を戸惑いながらも必死に止めて抵抗すると、
彼は俺のことを睨みつけた。