エスキス アムール
第34章 彼の選択
木更津は俺から一度目をそらすと
そのままベッドに倒れこんでまた俺を睨みつける。
やはり、いつもの彼ではなかった。
「木更津、どうしたんだよ。
なにかあった…?」
「波留くんってさ、
本当になにもわかってない。」
「え…?」
「様子がおかしいなんて、今頃気が付いたの?
波留くんは自分のことしか見えてないんだよ!!」
こんなに感情をむき出しにする彼を見るのは初めてで。
彼の肩に触れようとすると、思いっきり振り払われた。
初めて見る彼の様子に戸惑うことしかできなかった。わかることは、彼が何かに対して怒っているということだ。
自分のことしか見えてない…?
それがなにを意味するのか、わからない。
「どういうことだよ」
「自分の胸に手を当てて聞いてみたら?」
「おい、いい加減に…」
「波留くんのせいだ」
なんだって言うんだ。
何をこんなに怒ってる?
俺のせいってなんだよ。
俺のせいだとそれしか言わなくなった木更津に
だんだん腹が立ってきた。
「俺がお前になにしたんだよ!
八つ当たりもいい加減にしろよ!!」
向こうは酔っぱらいだということを忘れて、思わずこちらも感情をむきだしにした。
彼はそんな俺を冷たい目で一瞥すると、
自分の鞄を手に取ってふらっと玄関へと向かった。
その手には携帯も財布もある。
「どこに行くんだよこんな時間に…っ」