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エスキス アムール

第36章 ファースト キッス





「まさか本当になるとは思わなかった」

「なにが…?」

「噂」


その一言にカッと顔が熱くなる。
彼女が広めた『大野波留ホモ伝説』。
それを必死に否定してきたのに。
結局彼女の思惑通りになってしまった。


「何があったの?社長と。」

「え…。いや、あの…。」


黙り込んだ俺に彼女は核心をついてきた。
彼女はきっと木更津のことを心配してここまでやって来たのだろう。



「まだニューヨークに行く日じゃないのにもう先にいくからって。
場所教えてくださいって言っても言ってくれないし。
仕事は全部パソコンで送られてきて
全部こなしてくれるけど、
面倒臭いったらありゃしないんだから。

ねえ、これ。誰のせいなの?」


ギクリ。
彼女の視線がとても痛い。
誰のせいかと言われれば、
そうなったのは間違い無くこの俺のせいだ。
彼女だってもちろん気がついているだろう。
知っててここに来たし、知ってて言ったのだ。


どこまで知っている?
はるかちゃんの件も知っているのだろうか。


「……」

とてつもない視線を感じる。


そんなに睨まないでくれ。

コワイから。





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