エスキス アムール
第36章 ファースト キッス
「まさか迷ってるの?」
「……」
迷ってるの?と言うことは、確実に彼女はほとんどのことを知っている。
今の興信所はどうなっているんだ。
あまりにも頑張りすぎではないだろうか
これじゃあプライベートもへったくれもあったもんじゃない。
「さっきのムッとした顔。
それが答えたと思うけど。」
「……」
先程彼女が話した木更津の話に、嫉妬からムッとしたことがばれていたみたいだ。
気が付かれないほどの顔の変化だと思っていたのに。
この人はまさにできる女だ。
頭もいいしきっと気遣いもできる。
きっとなんでも熟せるのだろう。
だから、敵に回した時に恐い。
そう。
あの大学時代のときのような
悲劇を招くことになる。
だけど、彼女は根は優しいのだと思う。
今だって、木更津のことを大切に思っているみたいだし。
彼の人柄だ。
部下に信頼され慕われているのはよく分かる。
彼女の目元をみれば、
やはり、あのときの傘の女の子によく似ていた。