エスキス アムール
第36章 ファースト キッス
「三嶋さんって、あの時の傘の子でしょ?」
「………っ」
落ち着き払っていた彼女は
その一言で、少し動揺を見せた。
やっぱりそうだ。
その姿には見覚えがある。
あの時の女の子も
こうやってドギマギしていた。
きっといつものツンとした感じは表向きのもので、これが彼女の素なのだなと感じて、何だか嬉しくなった。
「…覚えてたんだね、あの時のこと…」
「うん、また会いたかったしね。
だけど、いつ行ってもいないからさ。
転校でもしたのかなって。」
「…私が避けてたの。
地味な姿、見られたくなかったから。」
彼女は恥ずかしそうに目を伏せて、少し笑った。
その顔は、頬はピンクでフワッと笑う、
あの子そのものだった。
俺が好きだった、あの子そのものだ。
一気に高校時代に引き戻されたような気がして、胸がドキドキする。
「どうして?可愛いかったのに。」
「可愛、かった?」
「あ、いや、今も可愛いです…」
必死に弁解する俺を彼女はまた、優しく笑った。