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エスキス アムール

第38章 彼の想ひ

【はるかside】





「……シュウ…。」

「久しぶり、はるか。」



懐かしい人影。
それはシュウだった。


相変わらず赤い髪をしているけど、
きっとニューヨークの方が馴染むだろう。


シュウには何も言わずにニューヨークに来た。
こっちに来てから携帯も変えてしまって、誰とも連絡を取っていなかったけど、最近こちらから連絡を取ったら住所を教えろと言われたので教えた。

こんなに早くくるとは思っていなかった。
心を許せる人と久々に会えたことがとても嬉しかった。


「連絡、してくれればいいのに。」

「今来たとこだから、ヘーキ。
早くいれてよ。お腹空いちゃった」



彼は相変わらずで。
ジゴレットはどんな感じだとか、
誰がNO1になっただとか、

近況話を私に聞かせた。

彼のことをシュウは一言も聞かない。話した方がいいのは分かっていた。
シュウがいなかったら、彼と付き合うこともできなかったのだから。




「オーノさん。」

「…え!?」


丁度考えていたところに、突然シュウが彼の名前を呟いたので、過度に反応してしまった。

そんな私を、神妙な面持ちで見つめる。
そのときに気が付いた。
彼がすぐにニューヨークに飛んできたのは、彼と私のためだったのだと。



「俺が何言いたいかわかる?はるか。」

「……」

言いたいことはよくわからなかった。シュウがどこまで知っているのかわからない。

彼が大変だったことをニュースで知ったのだろうか。
今の私たち関係がどうなったかを知っているのだろうか。

私が彼にしたことを、すべて知っているのだろうか。



思わず俯いて、自分の手を握りしめた。








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