エスキス アムール
第38章 彼の想ひ
「僕のことはいいからっていったじゃんか…っ」
涙が溢れた。
どうしようもなく、目の前の彼が好きだ。
出会った時から、
調べれば調べるほど
話せば話すほど
触れれば触れるほど
抱けば抱くほどに
彼を好きになる。
関わったら溺れてしまうと
わかっていたのに。
わかっていて手を出したのに。
彼は僕の涙を親指で拭い取った。
そうして、僕に触れるだけのキスを落とす。少し触れあっただけなのに、びりびりと唇がしびれるようで、思わず体が震えた。
「俺の気持ちはどうでもいいの?」
「……?」
小さな声で彼は呟く。
これ以上、どうやって君の気持ちを優先しろというのだろうか。
彼が彼女に会いたいと思っていると感じたから、彼女の住所を渡してこちらから関係を絶ったのだ。
できることはしている。
もう、これ以上ないくらい君のことを考えている。
バカみたいに涙を流して、彼の瞳を見つめた。
僕の気持ちをわかってくれと、
願いを込めて。