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エスキス アムール

第38章 彼の想ひ




ピリリリリリ

ピリリリリリ



そのとき、彼の電話が音を鳴らした。
彼はそれに反応もしない。
目もくれないで、僕の瞳だけを見つめていた。

その瞳に酔いそうになりながらも、言う。



「電話…なってるよ。
出なくていいの?」

「いい。」

「でも彼女かも…

「いい加減にしろ!!」



ビリビリと彼の声が響いて、
思わす口を噤んだ。

彼は本気で怒っている。
頭の血管の筋が見えそうなくらい。

彼はそんな僕の瞳を見つめ、


そうして

マンション内にまた静けさが戻る頃。



ポツリ




「すきなんだよ。」


彼は僕の顔を両手で挟んで囁く。


深夜のマンションに、
その言葉がシンと響いた。




「木更津のことが、好きなの。
この俺の気持ちはどうしたらいいわけ?」


「……っ」



額とひたいをくっつけて、
彼の低い魅力的な声が、


そんなしびれる言葉を

囁いた。



「…気の迷いでお前のこと好きだなんて言わない。
言っとくけどな、」


彼は額を離して僕を睨みつけると、周りをキョロキョロして声を潜め、
だけど、苛立ちを存分に出しながら。



「俺はホモが嫌いなんだよ!
男と女二股かけるほど器用じゃねーんだよ!
気の迷いで入り込んだりできる
世界じゃねーよ!!馬鹿!!」


「いたっ」

平手打ちで、
頭をひっぱたかれた。

人を好きになるって、
そう言うことだろーが。と、彼は続ける。
覚悟がいることなんだ、と。

ホモは嫌いだけど僕は好きだと言いたいのだろうか。
それだったとても嬉しい。


「お前の葛藤でページ使いすぎなんだよ!
アホ。飽きるわ!!」


僕の手から鍵を奪い取ると、
颯爽と部屋の中に入っていってしまった。
泣きそうになっていた彼のいきなりの変化に驚いて、思わず立ち尽くす。



確かに…、
ページ、使いすぎたかもな。




















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