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エスキス アムール

第38章 彼の想ひ






「ごはんは?」

「…食べてない…。」


怒られて引っ叩かれて何か子供になった気分だ。
それに加えてご飯を食べてないといえば、何かを作り始める。

なんだか、母親みたいだ。



「は、はるくん。
そんな、いいよ。疲れてるだろうし…」

「いいから、座ってろ!馬鹿!!」


…なんか会わない間に口が余計悪くなってる。

コワイ。


すっかり意気消沈してソファに座り込んだ。


彼は本当にこれでいいのだろうか。
後悔はしないだろうか。

あんなに好きだった彼女を
そう簡単に諦められるのだろうか。



「いたっ!!」

「また、余計なこと考えてたろ。
ほら、食え。」



気がつくと、あっという間にチャーハンができていた。
ご飯はパラパラだしいい香りがするし、まるでお店のやつみたい。


久しぶりに食べる彼の料理の味に感動する。
本当に美味しくて顔が綻んだ。


そんな僕を、彼は正面からじっと見ていた。

恥ずかしくなってなにか言葉を言おうと考えを巡らせていたとき、





「…すきだよ。木更津。」

「…っ」




余りにも優しい声に
食べ進めるスプーンが思わず止まった。


彼の方をみれば、

その声と同じようにとても優しい瞳で僕を見つめていた。


プライベートでしか
見せない顔。

その目の前に自分がいることを
とても嬉しく感じた。




「…好きなんだ。すごく。」

「……」



向かいに座っていた彼は
じりじりと僕の横にきて距離を詰めた。


ソファが、ギシリ

音をたてる。


彼が座った方がが少し沈んでバランスを崩しそうになる僕の腕をつかむと、
持っていたチャーハンのお皿と
スプーンを取り上げ机の上に置く。


そうして彼は、僕を見つめながら指を絡めた。

その挑発的な瞳に、
すべてを持っていかれそうになる。


彼の言葉を信じていいのだろうか。

好きという言葉に終わりがないとどうやったら、分かるのだろうか。

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