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エスキス アムール

第39章 ハッピーバースデイ

【はるかside】




「き、きっちゃった…」


シュウに促されて謝りの電話をいれたはいいけど、

あのときは忙しかったのか
気がつかなかったのか

電話に波留さんがでることはなかった。



シュウは、もう一回自分からかけて絶対に謝れよ。

そう言って、日本に帰って行ってしまった。


あれから少し経ってしまったけど、また、恐る恐るかけてみる。



そうしたら、


『もしもし?』

彼の懐かしいあの声が耳元で響いた。

自分でかけたとはいえ、
突然のことに、緊張してしまって
声が出なくて。

口をパクパクしたまま黙り込んでしまった。




『もしもーし』


どうしよう。どうしよう。


もし声を出して、私だとわかって
切られてしまったらどうしよう。

携帯を持つ手が震える。
でも、謝らなきゃ。

謝らなきゃ。
謝らなきゃ



「あのっ…

プーップーップーッ


「え"…!」


声を出す勢いで、きってしまったようだった。
自分の手が電話を切るボタンを押していた。



「き、きっちゃった…。」


うわー!!!!
最悪だー!!!

ああ、最悪だ。
絶対にイタズラだと思われた。
番号拒否されるかも…。

結局、彼とまた話すことは叶わなかった。

だけど、久しぶりに彼の声を聞いて元気そうな彼の声を聞いて。

とてもホッとした。



謝ることはかなわなかったが、
彼に電話をかけて収穫があった。

それは今、彼は日本にいないということだ。
国際電話で一番最初にかけると、電話がつながらなくて。


私も新しい番号だから拒否されているわけではないと思い、普通の電話番号にかけてみると、彼の電話につながった。

ということは、彼はアメリカ周辺にいるということになる。
もしかして…ニューヨークに?


そうだとしたら、彼はなぜニューヨークにいるのだろうか。


もしかして…
そんな淡い期待を一瞬抱いたが、そんなわけがない。

思い直して、筆をとった。















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