エスキス アムール
第39章 ハッピーバースデイ
『今日は何時に帰る?』
次の日もまた波留くんから同じメールがはいっていた。
『今日は深夜近くになりそう。
寝てていいよ。』
そう返すと、
また返信は来そうになかった。
というより、そのメールは昼頃にきていたのに、気が付いたのは夜の21時で。
もう、返しても意味がないだろう。
「……、何かあったかな。
…昨日と今日…。」
昨日と今日と、波留くんが僕の帰りの時間を何かと気にする。
記念日ってわけでもないしなんなんだろう。
僕の小さな呟きに、秘書の三島が反応した。
「社長、今日は
社長の誕生日ではありませんか。」
「…え?」
彼女は、僕と波留くんの再会から少ししてニューヨークに来た。
しばらく、波留くんに知られないように彼女にも住所を教えていなかった。
そのせいでたくさん苦労をかけたわけだけど、今となってはご愛嬌だ。
波留くんが良子ちゃんに居場所教えてあげなよ。と言われたので、急いで教えたのだけれど。
…良子ちゃんってどういうこと?
少し前まで三嶋さんじゃなかった?
僕がいない間に彼女と接触したことは分かったけど、なぜそんな呼び名で呼ぶようになったのか、
驚きすぎて、彼に聞くことができなかった。
彼女にもまた聞くことができていない。
時間が出来たら、波留くんに聞いてみようと思っていることだった。
「そうか…、それで波留くん…」
ようやく合点がいった。
今から帰れば、なんとか間に合うかもしれない。
だけど、仕事…
「今日はいいですから。
帰られたらどうですか?
…恋人のために。」
彼女の言葉に思いっきり振り向く。
バレてる。
僕の顔を見て、彼女はやはり恋人同志は似てますね。
と、笑った。
「…い、いつから?」
「最初からです。
社長は好きな方のことになると
本当にわかりやすいんですね。」
「…そ、そんなこともないと思うけど。」
僕の言葉に彼女はクスリと笑うと、急に真剣な顔をして、いった。
「それで…大野さんのことですけど…。
社長に謝らなければならないことがあります。」
「…な、なに…?」