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エスキス アムール

第39章 ハッピーバースデイ







「は、波留くん!!」


家に飛び込むと、波留くんはソファに横になっていた。


半袖、半ズボン

扇風機を当てて携帯を握りしめたまま、猫のように丸まっていた。

僕が駆け込んだ音で、ゆっくりと目を覚ます。



「…ん、…ん…?」


携帯の時間を確認して僕を視界にいれると、
あれ?と言う顔をして、また、携帯を見る。



「波留くん…」

「…おかえり…まにあったね…」


そういってふにゃりと笑うと、
なんの躊躇もなく僕に手を伸ばした。

その手に誘われて彼を抱きしめる。
久しぶりに起きている彼を抱きしめて心の奥の方がキュッとした。




「あー、ひさしぶりだ…」


僕の心を代弁するかのように彼が耳元で呟く。

その声に、力がこもった。




「木更津…誕生日、おめでと…」

「すっかり、忘れてた。
自分の誕生日…」

「そんなことだろうと思った。
良子ちゃんに教えてもらったんでしょ?」


また三嶋のことを名前で呼ぶ波留くんに、さっきの彼女の言葉が蘇った。



『私が無理矢理お願いして、
ファーストキスを奪ってもらったんです。
どうか、彼を怒らないでください』


いきなり土下座をするものだから、とても驚いた。


彼の性格だ。
誰でもするわけではないだろうが、彼女の勢いに押されて了承したのだろう。


それは、まあ、まあ。
許すとしても。

彼女の土下座に免じて。



何か呼び方まで
良子ちゃんになってると、

なんか、妬ける。













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