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エスキス アムール

第39章 ハッピーバースデイ






波留くんは僕の誕生日のために、早く帰ってきてくれたっていうのに、僕って最低だなと、思う。

だけど、彼に何でもすると泣きつかれたら放ってなんか置けない。



「なんでもするの?」


冷たくそう言うと、彼は涙で瞳を濡らしながら、頷いた。



「じゃあ…脱いでよ」



その一言に、目を見開いて顔を上げる。
首を横に振ったので、その顎をつかんで見つめ続ければ、またその瞳から涙がこぼれた。

それを指で拭ってあげる。



「…ここ、で…?」

「うん、なんでもしてくれるんでしょ?」

「…」


彼は悔しそうに顔を歪めた。
そりゃあなんでもすると言ったって、脱げと言われて人前で脱ぐなんて、普通の人なら嫌だ。


でも、そんな嫌がる姿も
悔しそうにする姿も
睨みつける姿も、


波留くんの場合、
こちらを興奮させる要素にしかすぎない。




「僕の誕生日プレゼントだと思ってさ。」

「プレゼントならここに…」

「それは、あとでもらうね?
まずは、波留くんを見たい」

「…っ」



彼は下を向いて、また首を横に振った。


「ねえ。なんでもするっていった。」

「……」


彼は少しだけ僕を見つめ、
どうしてもかと、念を押すように訴えかけた。


本気だよ。
もう、波留くんが欲しくて堪らないんだ。
また当分抱けなくなるだろうし。

早く帰ってきたときくらい、ね?




「まず、上脱いで?」

「…」



有無を言わさないその言葉に、
ようやく、彼は観念したのか上のTシャツに手をかけた。








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