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エスキス アムール

第40章 親友と部下

【木更津side】




「あ、おっかえりー!」



その日、彼は珍しく先に家に帰ってきていてご飯を作って待っていてくれていた。


いつになくご機嫌のようだ。
彼が機嫌がいいのはいいことだとは思うけど、いつにないその彼の様子に眉を寄せた。


少し顔が紅潮しているところを見ると、アルコールが入っているようだ。



「…お酒飲んできたの?」

「ん?あれ?わかるの?
ふふ、飲んできちゃった!」



…これは相当できあがっている。
少し嗜んだくらいではなさそうだ。


「…だれ。」

「んー??」

「誰と飲んだ。」


彼がこんなにお酒を飲むことは珍しい。
商品化の手伝いをしてくれているというミムラという人と飲んできたにしたって、こんな風になるだろうか。


一抹の不安を覚えて、腕をつかんでつい、声を荒げてしまった。

どうもこちらに来て、彼に束縛をすると宣言をしてしまってから、箍が外れたように自分を抑えられない。


その不穏な空気を感じ取ったのか、彼の顔からは少し笑みが消えた。



「要…、」

「カナメ?」


バツが悪そうに、ぽつりと呟いたその名前には聞き覚えがある。
要、彼の親友だ。

彼が木更津製薬を立て直すときに彼とは再会を果たしたと聞いていたが…


「要が仕事辞めて、俺を手伝うために来てくれたんだ」


そう聞いたときは、僕も驚いた。
安定した収入があるにもかかわらず、それを捨てて、しかも外国まで飛んでくるなんて。

やはり、要という人にとっても波留くんが思うのと同じように、彼のことを大切にしているのだと感じた。



嬉しそうにそのことを話す彼に、不安になった心はほっとして、気が緩んだ。





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