エスキス アムール
第40章 親友と部下
「木更津…、俺のこと嫌いになった…?」
ベッドに入って、彼がその言葉を紡ぐまで、僕たちは終始無言だった。
食事をし終わってからそれまで、二人とも目を合わせようとしなかった。
いや、僕が合わせようとしなかったのだ。
彼はタイミングをうかがっていっるようだったけど、僕がそれを阻止していた。
「嫌いなわけがない」
一言漏らした僕に、彼は少し安堵の顔を浮かべて僕の肩に額を擦りつける。
彼の言葉にできない愛情表現だ。
「…ぁっ、…ふ…」
堪らなく愛しく感じて、彼のうなじに吸い付くと、赤く印がつく。
声を漏らした彼は、そのことに気が付いたのか、嬉しそうに笑みをこぼした。
こんなことで彼をつなぎとめておけるのなら、いくらでもするのに。
そんな彼を無言で見つめ、額に、鼻に唇にキスを落としていく。
唇を噛みつくように唇で覆えば、彼はギュッと僕の服を握りしめながら応えた。
もっと、もっとと、深くなっていき、
僕の手が彼の服の中に入って肌に直接触れたとき、波留くんはビクンと体を揺らして、その手を掴んで止める。
怪訝な顔をした僕に彼はぽつりぽつりと話し始めた。
要くんにフラフラするなと言われたこと。
それを無視して、何も言わずにここに来たこと。
言おうと思っているけど、まだもう少し時間が欲しいということ。
要くんの言葉に腹が立たないわけではなかったが、そういう性格の人は親友がそうなっているのが心配で仕方がないのだろう。
彼の決死の告白を聞きながら、なだめるように髪の毛を梳いた。
「期間なんて関係ないよ。
それに、僕はずっと前から、波留くんのことが好きなんだから」
「え…?」
確かに彼が彼女のことを好きだった期間と、僕らが一緒にいる期間を比べたら、確実に後者の方が短い。
けれど、彼女よりも波留くんのことを愛している自信がある。
期間じゃない。
愛情の深さだ。
キミが親友に何を言われようとも離すものか。
ありったけの力を込めて、僕は彼の身体を引き寄せると、自分の腕の中に閉じ込めた。