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エスキス アムール

第40章 親友と部下

【波留side】




「おー!波留!また注文入ったぞ!」



要は嬉しそうに声をあげた。
要が来てくれた事で、経理関係は全てやってくれるし、デザインに専念する事ができて、ある程度の量の商品を作り出す事ができた。


ゆくゆくは家具にも手を出したいけど、
取り敢えずは小物から抑えて行って、定番商品を決める。
決まったあとで、家具のモチーフを決めて行く事にした。



家具の前にやりたい事はまだある。
それには、工学系の能力が必要とされた。
三村に誰かを紹介してもらうのもいいが、その前にそれが出来そうな人間の目星は付いている。

だけど、その人がここに来てくれるかはわからない。
なんせ、ニューヨークだ。
そして、給料もまだ他のところより少ない。


要に言ってオファーは出してもらったものの、
来る確率は20%くらいと言ったところだろうか。

20%は俺に免じてという気持ちがあった場合の確率。
彼の事だから他に就職先が決まってしまってもおかしくない。


来てくれるなら、今すぐにでも来て欲しいくらいだった。

その返事はまだ来ていないそうだ。
今か今かと待っているのに、手紙の返事は来ない。


本当に送ってくれたのかと要に聞いたけど、
焦ったって来ないものは来ねーよと、
冷静に返されてしまった。


彼の瞳が、彼の笑顔が忘れられない。
『頑張ってください』と、あの廃れていた俺に言った彼の真っ直ぐさはどうしても頭から離れなかった。

ああいう奴を雇いたい。

あの日に確か木更津に話したけど、
その気持ちはこちらに来ても変わらなかった。

彼は工学系だと聞いていたし、
やりたいと言っていた仕事もここにあっている気がする。

オファーなんて、今の就職難だと言われているこの時代にあり得ない事だけど、他の企業に取られたくないくらい優良な人材だった。

あんな奴がこの会社に来てくれたら、きっといい会社になる。
そう確信していた。






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