エスキス アムール
第40章 親友と部下
「ただいまー」
涼しい部屋に食べ物のいい香り。
明かりが付いた部屋に、ただいまという俺。
違和感を覚えたのか、高峰は不思議そうな顔をした。
「おかえり。
あ、いらっしゃい」
「あ…れ、お、おじゃまします…」
そう言って顔を出す木更津に、
ぽかんとして高峰はその状況を見つめた。
「これはね、高峰」
玄関ではなんだからと部屋の中へと促して、彼との関係を話そうとしたとき
「僕は木更津です。
波留くんとはシェアハウスみたいなことしてます。
よろしくね」
そう言って、木更津はニコリと笑う。
平然と嘘をかました彼に驚いて視線を送ると、ウィンクをして笑ってキッチンへと行ってしまった。
「ニューヨークでシェアハウスなんて、お洒落ですね!」
なんて、彼は騙されてテンションをあげている。
「いや、これは違くて…」
「波留くーん」
真実を話そうとすると、キッチンから見計らったかのように木更津が自分の名前を呼んだ。
どういうつもりなんだ。
「おい、なんで木更津…」
慌ててキッチンに向かうと、
彼は怒った様子もなく、お茶を用意していた。
「波留くん、要くんにいう前にバラすのは気が引けるでしょ?」
俺が考えていたことをズバリ指摘され、
呆然と彼を見つめると、やっぱりといって笑った。
その笑顔にか、ジワジワと何故だか心臓の中心が熱くなるような感じに襲われる。
どうしようもない、突発的な熱。
俺の横をすり抜けた木更津は、
リビングに座っている高峰に風呂に入って来なと声をかけていた。
思わず座り込む。
なんだか無性に彼を抱きしめたくて仕方がなかった。