エスキス アムール
第40章 親友と部下
俺も高峰も風呂に入ってさっぱりとしたあと、また酒を三人で飲んだ。
今度は俺と高峰と、木更津。
シェアハウスはどういう経緯で始めたんだと、質問する高峰に、
木更津は平然と、また嘘に嘘を塗り固めて楽しそうに話す。
酒が回っていたところに風呂に入って、また酒を流し込んでいた俺はもうフラフラで、思考回路はグチャグチャだった。
外ではこんな飲み方はしない。
木更津が側にいると思うと、安心してしてしまう、自分の悪い癖だ。
嘘に嘘を固める木更津。
この自分のためだとわかっているのに、どうしようもなくイライラする。
いや、自分のためだとわかっていなかった。
このときばかりは。
だからイライラしたのだ。
お酒の飲み過ぎで、
思考回路がグチャグチャになっているため、
ボーッと彼らの話を聞きながら、
どうして木更津は、
俺と恋人だといわないのか。とか
どうして木更津は
俺と同棲していることを隠すのか、とか。
意味のわからない方向に向かって進み拗ねていた。
もちろん、そんなことを考えているとも知らない木更津は、俺のために嘘を重ねる。
「波留くんとはパーティーで知り合って仲良くなって…」
なんて、全然違うこと言ってる。
「木更津さん、女性にモテそうですねー!」
なんていう高峰の言葉に、
そんなことないよーと、
満更でもない様子で返している。
「もー、やだ!!!」
気がついたら、声をあげていて。
不穏な空気を察知したのか、木更津は水を俺の前に持って来て飲ませようとした。
「木更津は違うだろー?!」
「波留くん、ほら水のんで」
「やだ!!木更津は、なんで俺のこと隠すの!
俺が嫌いなの?俺と別れたいの?
ねえ、木更津!!」
「わかったから、いいから。水のみな?」
「…わかれる…?」
俺が言った一言に、高峰も酔っているものだから考えなしに突っ込んでくる。
唯一素面に近い木更津は、
そういうことじゃない。
波留くんは酔ってるだけだからと、
必死に誤解されないように努めてくれていた。