エスキス アムール
第1章 ジゴレット
この仕事をしていて、
唯一の楽しみ。
それはあの人に会うことだった。
決して交わることのない身体。
決して交わることのない気持ち。
所詮は客と風俗嬢だ。
頭の中では
分かっているのに、
わかりたくないと
身体が拒否をする。
最初は
お客さんの中の
一人だったのにな。
どうしてこんなに…
「なに?
またオーノさんのこと
考えてるの?」
違うところへ
意識を飛ばしていると、
シュウに引き戻された。
「ち、ちがうっ!」
急に入ってこられて、
しかも図星。
対処ができなくて、
顔はきっと真っ赤だろう。
それを
隠すように、
シュウから顔をそらした。
「はるか、あんまり
深入りしない方がいいと思うよ」
そんな私に、
シュウは冷ややかな
言葉を向けた。
だけど、
それは私を思ってのことだと
分かっている。
ウェイターなりのか、
シュウなりの、
思いやりなのだろう。
所詮は客と風俗嬢。
頭の中で
私が考えていたことを、
シュウに遠回しに口で言われた。
「…わかってる…っ」
彼なりの
思いやりだということも
分かるのに、受け入れたくない
という気持ちからか、
すごく苛立った。
「わかってるから、
もうでてってよ!!」
そう言って、
シュウを部屋から押し出す。
扉にうつかると、
息を思いっきり吸い込んで
吐き出した。
ずるずるっと、力なく座り込む。