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エスキス アムール

第1章 ジゴレット


目を瞑って、
見えているものを
遮断する。

真っ暗で何も見えない。

静かな部屋。

それだけだったが
心が落ち着くような気がした。

だんだんと、
その中にあの人の姿が浮かんで…



ガンっ!!

「いっ…!!」

思いっきり
扉の角が後頭部を直撃した。


「あ、まだそこにいたの?
ごめんごめん!」

そう言って
ヘラヘラと笑いながら
手をパタパタする。


……シュウ。


態とだろ。


この野郎。

今度覚えておけよ。

そう言って
立ち上がろうとした時、


「言い忘れてたけど、
今日の19時、
予約入ったから。
準備、よろしくね。」


「は…ちょ、待ってよ!」



頭を押さえながら、
立ち上がる。

呼び止めると、


「風呂、
入っといた方がいいよ。」

シュウは
少し扉から顔を出して
意味ありげにいった。


「なんでそんなこと…
だれ?はじめての人?」

訝しげに聞く私に、
シュウはふっと笑うと


「オーノさん」

そう呟いた。

「え…?」

「指名だよ。オーノさん。」

そう言うと、
扉がしまる。

心臓が一気に
バクバクと言いはじめた。


一気に高鳴る鼓動。

『またすぐ来るから』

その言葉がまた蘇る。

本当に、
すぐに来てくれるんだ。

嬉しい気持ちを押さえつつ、
バスルームへと向かった。



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