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エスキス アムール

第6章 甘い体験





「じゃあ
一個ずつ入れれば
食べられるってことですよね?」


「そう思ってさ、
大学生の頃に一個食べて見たらさ、
ダメだね。
トラウマってやつ。

鼻からも口からも
息吸えなくなって、吐き出した。」


もうあんな思いはしたくない。

苦しそうな顔をして、
コーラファンタに口をつけた。



「はるかちゃんは?
嫌いなものとか無いの?」

「うーん、甘いカレーとかかな。」


「あ!分かるわー!
俺も無理!
カレーじゃねーじゃんって
思うよね。」


「そうそう!そうなんですよ!

もういっつも甘いから嫌で嫌で」


好き嫌いの話は意外にも今日一番の盛り上がりを見せた。


「お母さんとかが甘党なの?」


「えと、いえ…おばあちゃんが甘党で」

「あー、おばあちゃんか。」

そう大野さんは返したけど、
少しだけ不思議そうな顔をした。



「私、両親がいなくて。
おばあちゃんに育てられたんです。」


「あ、そうなの?」

大野さんは、
少しだけ驚いた顔をした。


「小さい頃に亡くなったみたいで。

だから、
料理はとっても美味しいんですけど、
カレーだけは味の好みは合わなかったんですよね。」


「あはは、そっかそっか」

大野さんは、
優しい瞳を向けると、
ごめんね、辛い事思い出させて。そう付け加えた。





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