エスキス アムール
第6章 甘い体験
下手したら
人間としても扱ってもらえないこの仕事なのに。
どれだけ
優しくて温かいのだろう。
こらえようと思っても
涙が止まらなかった。
「何を俺は
偉そうに語ってるんだろな…って、はるかちゃん?!」
私が泣いているのに気が付くと、
大野さんは
慌ててハンカチを出して私に差し出してくれた。
「頑張ったね。偉かったよ。」
そう言って私の頭を撫でる。
その温かい手に
さらに涙が止まらなかった。
「ほら、
ジンジャーカルピスでも飲んでさ!」
「…要らないです」
「あははは!よっぽど嫌いなんだね。」
大野さんはまいったな、
と言いながら、
それを飲もうとはせずに、
置いた。
あなたが飲めないのなら誰も飲めません。
時計はもうすぐ
22時を指そうとしている。
そろそろ大野さんも帰らないと、明日も平日だから
朝早くから仕事があるだろう。
もう、
こんな時間は無いかもしれない。
もう、
来てもらえないかもしれない。
だから、
最後のつもりで、
大野さんにお願いをした。
「あの…」
「…ん?」
「私を…
私を…抱いてくれませんか」