エスキス アムール
第55章 オムライス
「……どこにいくの」
「……あ、の……っ」
久しぶりに木更津の香りに包まれてドキドキは最高潮だ。
それと同時にどこかほっとして顔が綻ぶ。
そんなだらけた顔を見られたくなくて俯いた。
「波留くん……よかった……」
「……?」
何が良かったのかは分からないけど、抱き締められた腕の中から顔を覗かせると、木更津もとても安心した顔をしていて、嬉しくなる。
きっと、木更津は俺が矢吹のところに行くのかもしれないと不安になってあんなに怒ったのだ。
そうだったら、本当に嬉しい。
顔に息がかかる距離で見つめ合う。
二人の間には甘い空気が漂っていて。
そのままキスをしたかったけど、そうしたらベッドに直行な気もしたから逸る気持ちを抑えた。
ベッドにいくのもいいけど、今日は喧嘩していた分、隣で寄り添いあいたい。
「……ね、何がいい?」
「え……?」
「夕飯。光平の好きなもの、作る。」
そう言うと、木更津は柔らかくフワッと笑う。
嬉しくて俺が口角をあげると、木更津がいった。
「……オムライスが食べたいな」