エスキス アムール
第9章 変態熊吾郎
この人は
熊みたいに
がたいは良いし、
風格もあるように見えるので、
何も知らない人から見ると
かなりのやり手に見えるけど、
いやいや、
彼は何も考えていない。
彼の特技は、
何かを考えているように
見せることだ。
それで
ここまで来ているのだから
ある意味凄い。
あ、失礼。
何も考えていないわけじゃない。
酒と、女と、飯のことを
考えるのは
お手のもんだ。
今だってホラ。
俺と木更津さんの
世間話なんて聞いちゃいない。
じっくり、
じっくりと、
料亭の女将を見定めているのだ。
その事に、
俺の隣にいる秘書は気が付いていないだろう。
困ったもんだ。
観月吾郎こと
変態熊吾郎は、
いつ、その変態性を出すか
わからない。
ちゃんと見張ってなきゃならないんだ。
けど、
今日の相手の木更津さんは
俺と年の近そうな、
好青年のような感じで、
頭も切れそうだ。
上っ面に相手をして
攻略できそうもない。
秘書が
その見張る役回りを
してもらわなきゃ困るんだよ。
じゃなきゃ、被害者が出る。
下手したら、
観月製薬がそれで終わるかもしれない。