真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第7章 敵になっても心得は同じ事である。
ぼんやりと、答えから逃げ続けてしばらく。ゴールデンウィークに差し掛かったその日に、千恵は幸村から信之来訪が告げられた。
「兄上が来るでござる」
ゴールデンウィークは稼ぎ時だと真紀に誘われていた幸村だが、信之が来るなら流石に抜け出せない。心なしか青い顔をした幸村は、食べ納めと言わんばかりに板チョコをかじりながら、千恵に頭を下げた。
「わざわざ紀州まで来て、日帰りという訳ではないでしょうから、一週間くらいは来られないと見積もってくだされ」
「そっか、真紀さん泣きそうだね……まあ、前から行けないかもとは言ってたんでしょ? フォローはしとくから」
「穴が兄上に見つからないよう、くれぐれも頼みます。こちら側には幸い扉があります。穴を抜けられなければ、どうとでも言い訳は出来ますから」
幸村はそう言い残して、そそくさと戦国の世に戻っていく。長い休み、会えないのは残念でもあり、安堵した気もした。
(今は落ち込んでる場合じゃないや。とりあえず、鍵掛けなきゃ)
千恵はこの日のために買ってきた鍵をクローゼットの取っ手に取り付け、しっかり施錠する。
(これで大丈夫、だね)