真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第8章 遊園地を回りながら、こう考えた。
夕方、千恵と信之が迎えに行けば、幸村はすっかり燃え尽き放心していた。ゴールデンウイークともなれば、客の入りも違う。一方真紀は、笑顔が止まらないようでご機嫌だった。
「お疲れ様、幸村」
「千恵殿……この世界には、数え切れない程の人がいるのですな」
「そういう時期だからね。あたしは休みだけど、接客業の人は今が勝負所でしょ」
「早く帰って、酒が飲みたいでござる……」
へこたれる幸村を見ていると、千恵はつい甘やかしてしまいたくなる。帰りに何かいい酒でも買ってあげようかと思案していると、真紀が信之に声を掛けた。
「そういえば、信之さん」
「はい、何か?」
「信之さんって、帰省中なんですよね。幸村とも久々に会うんでしょう? ゴールデンウイーク中、ずっと幸村借りてるんじゃ申し訳ないかなって。せっかくの休みだし、幸村ともゆっくりしたいんじゃないですか?」
「ああ、お気遣いありがとうございます。けれど構いませんよ、私は普段通りの信繁を見たいのですから」
真紀の言葉に、千恵はふと思い出す。ここは平成の世。こちらでなら信之も、咎めを受けず幸村や昌幸と歩けるのだ。